この道を行けばどうなるものか…迷わず行ってみよう!! 
 
 
 

親指のうずき

親指のうずき (クリスティー文庫)親指のうずき (クリスティー文庫)
(2004/08/18)
アガサ・クリスティー

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亡くなった叔母の遺品、一幅の風景画を見たタペンスは奇妙な胸騒ぎをおぼえた。描かれている運河のそばの一軒屋に見覚えがあったのだ。悪い予感を裏づけるかのように、絵のもともとの所有者だった老婦人が失踪した…初老を迎えてもますます元気、冒険大好きのおしどり探偵トミーとタペンス、縦横無尽の大活躍。
(「BOOK」データベースより)
トミー&タペンスシリーズ第三作。前作『NかM』からもう何十年と経っているようで、すっかり老いてしまったベレズフォード夫妻で、物語のあちこちに「年を取った」とか、「もう若くない」という言葉が漂っていて、ちょっぴり寂しい気がしました。

冒頭から、年寄りについて延々と書かれていて、年を取ったらどうなるとか、言動について嫌になるほど頷ける記述があるんですが、私、これを病院の待合室で読み始めたものだから、なおさら、目の前にモデルのようなおばあちゃんたちの井戸端会議が繰り広げられていて、読みながら、うんざり。そして、なかなか、物語が見えないまま、ページを進めなくてはいけないので、二重に退屈。

そう、最初からかなり退屈なんですよ。タペンスの妄想と暴走で、ランカスター夫人を探し始めるんですけど、これが推理小説で、いつか必ず事件が起こるという前提がなかったら、最初で本を投げ出していただろうと思います。いつか事件になるから頑張れと自分を励まして読んだ…なんて、なんだかおかしな話だと思いますが、なかなか、全体像が見えてこないし、タペンスのテリア並みの嗅覚しか信じるものがないしで、読みながら、トミーの気分が味わえます。

『秘密機関』や『NかM』のような冒険活劇でもなく、痛快なラストもなく、どちらかというと地味な話でしたが、夫婦の在り方や愛情がテーマになっていて、ベレズフォード夫妻とスターク卿夫婦の対比から、地味にジワジワと夫婦であることの喜びや苦悩を感じました。クリスティーの他の作品にもありますが、ここでも、真実を知ることが果たして正しいことなのか?という問いかけがあるような気がしました。

タペンスには、ミス・マープルやポワロのような強さはなく、自分の直感を信じて行動した結果に対して、少し動揺した様子もあったんですが、そこをトミーがフォローする、初老を迎えても、やっぱり二人で一つなんだなあ。

大掛かりな犯罪組織や、老人ホームでの不審死も絡んできたりして、ランカスター夫人失踪事件からかなり飛躍してしまったけれど、タペンスが追うのはランカスター夫人ということで、結局、結末はそこに絞ったものになって、ちょっと消化不良な気もします。でもなあ、やっぱり、スターク卿の妻を想う気持ちが、それがたとえ間違った方法で、苦悩しか生まないものだったかもしれなかったにせよ、それを思うと切ないというか、哀しくて、しんみりした気持ちになるのです。

たぶん、この作品の良さは、10代の小娘の頃に読んでもわからないんだろうな〜。若さとか希望に満ち溢れていると、年を取ることの憂いなんかは、わからないだろうし、ああ、でもそういうのが分かるようになったってことは、自分も年を取ったってことなんでしょうね。




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